懺・さよなら絶望先生

評価
★★★☆☆ 3
公開
2009

作品概要

久米田康治の漫画を原作とする新房昭之監督によるシャフト製作のブラック・コメディアニメ。『さよなら絶望先生』シリーズの第3期。

スタッフ・キャスト

公開
2009年
原作
久米田康治
監督
新房昭之、龍輪直征(副監督)
シリーズ構成
新房昭之・東富耶子
キャラクターデザイン
守岡英行
出演者
糸色 望:神谷浩史、風浦可符香:野中 藍、木津千里:井上麻里奈、小森 霧:谷井あすか、常月まとい:真田アサミ、木村カエレ:小林ゆう、関内・マリア・太郎:沢城みゆき、小節あびる:後藤邑子、日塔奈美:新谷良子、藤吉晴美:松来未祐、臼井影郎:上田陽司、久藤 准:水島大宙、新井智恵:矢島晶子、糸色 倫:矢島晶子
音楽
長谷川智樹
アニメーション制作
シャフト

感想・レビュー(ネタバレあり)

1話で完結しない2.5部構成

今作は一部のパートを次回に持ち越す「2.5部構成」となっており、ひとつのお題を掲げてから完結までシナリオが”きっちり”と完結して分かりやすかった前作の3部構成に比べると明瞭さに欠ける。続きの回では前の回と重複するシーンを流したりしていて、手法が不完全で迷走しているような印象を拭えない。本シリーズのエピソードは、最初に問題を提起して例題を挙げていき、風浦可符香の電波な発言などで方向を変えて内容がエスカレートしていくという、徐々に煮詰めていくようなオーソドックスな展開が多いが、エピソードを分けてしまうと前半部分は尻切れとんぼで煮えきらないし、後半部分は他のエピソードに続き突如あらわれるので視聴者の気持ちが入っていかないなど良いところが見当たらない。

「週間絶望先生批評」という自虐気味のメタネタで視聴者の不満を牽制するようなコーナーも設けられていて、この重複シーンの件などについてもネタにしてお茶を濁すようなことをしているが、このようなことをいくらやっても作品自体の質が上がることはないだろう。

毒の強いパロディや風刺は本作でも健在。特定の国を痛烈に皮肉るようなネタも随所にあり、作者の私見を強く顕したそれらギャグテイストが観る人間を選ぶという点もいつも通りだ。

ホラー&ダーク・映像的な新機軸

絶望先生や木津千里によるホラー演出が過激度を増している。特に木津千里は恐怖キャラが完全に出来上がっていて、他の人物たちから恐れられているところが面白い。ホラー演出は映像的にも見どころとなっている。

第8話「最後の、そして始まりのエノデン」では劇団イヌカレーが制作を手がけていて、同ユニット特有の作風が不気味なテイストを醸し出している。絶望先生による「昔は学生さんで賑わっていたらしいんですけどね…」の台詞が残す余韻が味わい深い。

新たに追加されたお約束ネタ

今作から木津千里の台詞に合わせて句読点とSEが挿入されるようになった(初出はOAD)。また、常月まといには絶望先生の「居たんですか?」の問いに対して「ええ、ずっと」と返す定番台詞が追加された。このような”お約束”はこれまでもあり、日塔奈美の「普通って言うな!」のような台詞が挙げられるが、こちらがツッコミによりネタを落としているのに対して、前者ふたつはただの定型句であって笑いにつながるものではないので、見ていてなんだか居心地が悪い。特に句読点に関しては映像が見にくくてわずらわしさを強く感じさせる。原作漫画で台詞に付いている句読点を映像でも表現したいというのなら、声優の演技に委ねるべきではないだろうか。

また、今作で追加された要素はランダムに使用されるのではなく、条件が揃ったときにほぼ毎回に渡って規則的に使用されているため、余計さを一層際立たせている。ランダムに使用したり、ここぞというときだけに使用すれば良い効果が望めたのかも知れない。一見さんに優しくないお約束ルールを追加してただ毎回やっておけば本シリーズ『絶望先生』を表現できるという安易な思想が透けて見えるようでもある。

また、擬音を声優の台詞で表現するよう徹底した演出もあるが、数が多いのでこちらもやや冗長な印象を受ける。

新コーナー「あらすじ」と「えかきうた」

作品冒頭に斎藤千和による「前巻までのあらすじ」(という名のネタ)が毎回挿入されるようになった。(原作由来の)内容は置いておいても、おどけた朗読は制作サイドと声優オタクによる内輪ネタのようでもあり薄ら寒いものを感じさせる。本編のテイストと並べても浮いているし、これを笑って楽しめる人間はごく限定的だろう。冒頭にあるばかりに、このあとに続く本編への視聴者の視聴意欲を減退させてしまっている。

また、各話の最後に声優や関係者の中からふたりをピックアップした「絶望先生えかきうた」が挿入されるようになった。声優たちによる絵描き歌の出来の良し悪しを単純にネタにするというだけではなく、理解不能なシュールなギャグがエスカレートしていくので、オチが予測できないところに面白さがある。

大槻ケンヂ・絶望少女達によるテーマ曲

テーマ曲は前作までと同様に大槻ケンヂや絶望少女達(女性声優陣)の歌唱による楽曲だ。本作のオープニング曲『林檎もぎれビーム!』は前2作のオープニング曲よりもオタク色が強くなりすぎてしまったような印象もあるが、大槻ケンヂによるルサンチマンたぎる歌詞世界は健在で、全作で統一が図られている。映像では風浦可符香がクローズアップされていて、絶望先生により抱きとめられるシーンもある。前2作ではこのようなシーンは常月まといが請け負っていて、可符香はラストで寂しげにたたずむというのがハマっていただけに、メインヒロインが優遇されすぎた今作のOP映像はどうにも腑に落ちない。一方でエンディング曲「絶望レストラン」の映像ではキャラクターたちの就寝前のプライベートというような映像が続き、一人佇む可符香のリップシンクが絶妙なタイミングで挿入されている。

“普通”は使い勝手が良い

人物が神出鬼没のギャグ漫画であるとはいえ、絶望先生と風浦可符香が唐突にふたりだけで連れ立っているシーンが多くて、微笑ましくもあるが可符香ファンを嫉妬させる。関内・マリア・太郎のキャラや声の演技が少し変わっていて、癒し系テイストは薄れてしまったようだ。普通キャラの日塔奈美(新谷良子)は普通のリアクションの使い勝手が良いのか出番が増えたような印象を受ける。声も良いし、3期通して観てくると愛らしさに気付かされる。

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