作品概要
黒澤明監督による時代劇ドラマ映画。
スタッフ・キャスト
- 公開
- 1985年
- 製作国
- 日本・フランス
- 監督
- 黒澤明
- 脚本
- 黒澤明、小國英雄、井手雅人
- 製作
- セルジュ・シルベルマン、原正人
- 製作総指揮
- 古川勝巳
- 出演者
- 仲代達矢、寺尾聰、根津甚八、隆大介、原田美枝子、井川比佐志、ピーター、植木等、田崎潤
- 音楽
- 武満徹
- 撮影
- 斎藤孝雄、上田正治
- 編集
- 黒澤明
感想・レビュー(ネタバレあり)
『リア王』を下敷きにしたとされる緻密な人間ドラマが時代劇の中で繰り広げられる傑作。物語の中心に据えられた一文字家の人々は英才というばかりではなく、側近や妻に助けられたりときには翻弄されたりしながら、愚かさをむき出しにした人間として皮肉たっぷりのドラマの中で描かれていく。大仰な演技・演出や説教じみた長台詞もあり、全体の作品テイストは人間ドラマに焦点をあてた舞台劇のようなものを目指したんだろうか。その”ぶっ飛んだ”描写にはシリアスなシーンなのに爆笑できるシーンがいくつもあった。狂ってしまった秀虎の前で狂阿弥がうたを歌いだすシーンでは興奮で目頭が熱くなった。合戦のシーンでは騎馬隊が水を切って川を渡るシーンが良い。
美術的な部分が理由なのか映像は幻想的で日本ではない異国を舞台にしているようにも見えてくる。城下町や市民が描かれない映像やドラマにはリアリティが無いという批判的な意見もあるようだ。合戦のシーンでは馬を映しておいて鉄砲に倒れた馬上の人間が落ちてきて初めて映るという手法を上手く用いている。しかしこの合戦のシーンは長すぎて同じようなカットの繰り返しが目立つように感じた。末など人物の寄りのカットが少ないのが気になった。何か特別な理由があるんだろうか?
音楽では笛の演奏が良くて痺れた。狂阿弥役ピーターはキャストの中では演技が上手くないように見えたけれどこの役を演じ切っているし、キャスティングは良かったと思う。
観たのはDVD版で映像の輪郭がぼやけていて画質は劣悪だった。原版に問題があるんだろうか。