この世界の片隅に

評価
★★★★★ 5
公開
2016

作品概要

こうの史代の漫画を原作とする片渕須直監督・脚本による戦争アニメ映画。

スタッフ・キャスト

公開
2016年
原作
こうの史代 『この世界の片隅に』
監督
片渕須直
脚本
片渕須直
出演者
のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外
音楽
コトリンゴ
アニメーション制作
MAPPA
製作
真木太郎
製作総指揮
丸山正雄

感想・レビュー(ネタバレあり)

つい深く考察したくなるような丁寧に作られた物語が、美麗な背景と精緻な映像表現によって描かれる。映像のどの瞬間をキャプチャーしてもポスターに出来るようなぬかりない作画。主人公すずは少しボケたところがあるが、努力を惜しまないので料理や裁縫などの腕を上げていくし、焼けた家の消火に奮闘するところなどに芯の強さも見られ、観客の興味を惹くには十分な人物だと言えるだろう。

原爆が落ちた瞬間もその後遺症も、理解されるまでは人々に深刻に受け止められないところにリアリティーがあり、同時に哀しくもある。物語の終わりはかすかな希望を感じさせるように作られているが、原爆を知る日本人には、叶わない夢を見ているような気分にさせられる者も少なくないだろう。

結婚初夜に滞りが無いように祖母がすずにアドバイスした傘の問答が、実践では違う意味で使われてしまう台本には上手いユーモアが効いている。

作品はくどい心理描写を省いているため、観客は何も押し付けられることなく自分の好きなように作品を楽しめるようになっている。クライマックスですずが怒りにまかせ水を汲んで畑まで行き慟哭するシーンでは、ごくありがちなアニメ表現になってしまっているのがやや残念。

原作者であるこうの史代が女性であるためか、戦時中に糊口をしのぐために工夫を凝らす女性たちや、すずの恋愛など女性目線での物語が多く描かれている。原作には夫・周作と遊女・りんの関係が明かされ、すずを交えた3角関係が描かれているようだが、129分の初出のアニメ版ではカットされている。結果としてはこのバージョンは性別を問わずに観やすいものとなっている。本作のヒットを受けて長尺版も作られるようなので、おそらくこの部分が追加されることになるのだろう。

すずを演じたのん(元・能年玲奈)の声は子供すずには少し大人びて聞こえたが、物語はすぐに大人すずに移っていくので問題はない。元々の彼女の持つ雰囲気はすずのキャラクターに合っているし、替えの利かないキャスティングとなった。

片渕須直の作品一覧2

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