作品概要
D・W・グリフィス監督・脚本によるサイレント・スペクタクル映画。ゆりかごを揺らす女の象徴的なイメージカットを挟みながら「アメリカ編」「バビロン編」「ユダヤ編」「フランス編」の4編の”不寛容”の物語を並行して描いていく。2部構成。
スタッフ・キャスト
- 公開
- 1916年
- 製作国
- アメリカ
- 監督
- D・W・グリフィス
- 脚本
- D・W・グリフィス
- 出演者
- リリアン・ギッシュ
- 撮影
- ビリー・ビッツァー
- 編集
- D・W・グリフィス、ジェームズ・スミス、ローズ・スミス
感想・レビュー(ネタバレあり)
かなり古い時代のサイレント作品であり、複雑な作品構成であることも相まって物語が分かりにくく、前半部分はやや退屈してしまう部分もあるかもしれないが、後半からの戦争シーンやクライマックスのスペクタクルシーン、巨大なセットの中で大人数のエキストラを動員して撮影された映像には圧倒される。クライマックスでは映像がすべての物語を目まぐるしく駆け巡り、物語が最悪の結末へと収束していく様には極上のエンターテインメントを見た。
この頃のサイレント作品の一般的な作風なのか、俳優の演技はどことなくコミカルでコメディ作品のように見える部分も多い。ゆりかごを揺らす女のカットが作品に詩的なイメージを添えている。
それぞれの物語の時代を印象づけるような作り込まれた衣装や舞台が視覚的にも楽しませてくれる。ダンサーがシンメトリーに配置されたダンスシーンが印象的。コミカルな映画音楽の使い方はまだ発展途上としても、シリアスシーンでの音楽スコアはなかなか良かった。
戦争シーンは圧巻で、巨大なタワーを倒すシーンやおぞましい見た目の戦車などには目を見張るものがあった。首をはねるシーンなどの強烈なバイオレンスシーンもある。
撮影技術では「グリフィス・モンタージュ」と呼ばれるモンタージュ技法や「クロスカッティング」という編集手法が使用されているようだ。1ヶ所に今では当たり前になった「フラッシュバック」のカットがあった。屋内から外を見ている人物が居る部屋を横から映したいくつかのシーンは映像的に分かりにくく、まだ撮影方法が洗練されていないようだ。