作品概要
虚淵玄原作、あおきえい監督によるufotable制作のファンタジーアニメ。『Fate/stay night』の前日譚を描く。
スタッフ・キャスト
- 公開
- 2011年
- 原作
- 虚淵玄、TYPE-MOON
- 監督
- あおきえい、恒松圭(監督補佐)
- 脚本
- ufotable(佐藤和治、桧山彬、吉田晃浩)、実弥島巧
- キャラクターデザイン
- 武内崇(キャラクター原案)、須藤友徳、碇谷敦
- 出演者
- 衛宮切嗣:小山力也、セイバー:川澄綾子、アイリスフィール:大原さやか、遠坂時臣:速水 奨、アーチャー:関 智一、言峰綺礼:中田譲治、アサシン:阿部彬名、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト:山崎たくみ、ランサー:緑川 光、ウェイバー・ベルベット:浪川大輔、ライダー:大塚明夫、雨生龍之介:石田 彰、キャスター:鶴岡 聡、間桐雁夜:新垣樽助、バーサーカー:置鮎龍太郎
- 音楽
- 梶浦由記
- アニメーション制作
- ufotable
感想・レビュー(ネタバレあり)
ゲームは未プレイでFateシリーズのアニメ作品を観るのは初めて。第1話で聖杯戦争への参加キャラクターが紹介され集っていく導入の出来が素晴らしく大いに興奮させられた。バトルシーンの作画や演出が巧妙で迫力とスリルがある。キャラクターはそれぞれを丁寧に描かれていて、言動が一貫しているかどうかは検証していないけれど、英霊やマスターそれぞれに思想があり、さらにお互いの問答によって一段上に切り込んでいく台本が面白い。普段あまり聞きなれない言葉が使われているので、調べるとちょっと勉強になったりする。物語は先が読めないし続きが気になって視聴が楽しかった。
ただし、登場キャラクターそれぞれを活かす前提で脚本が作られており、キャラクターにたっぷりと見せ場を作られるまでは早急に戦いの決着が付いたり生死が決まったりすることは無い。そのせいで長い会話シーンを与えられたキャラクターに分かりやすく死亡フラグが立ってしまうのはご愛嬌か。本作は群像劇を描いたオペラを観るように楽しむのが良いのかも知れない。
ゲーム未プレイで観ているせいなのか、ファンタジー世界の設定がよくのみ込めずに違和感を覚えることが多かった。まず何より物語の最大のテーマである聖杯戦争を誰が取り仕切っているのかが分かりにくい。綺礼(きれい)の父が審判役なのだとしても、サーヴァントの死をどのように感知しているのかなどの説明が無い。聖杯によるマスターの選別や宿される令呪についても”神のみぞ知る”で規則が曖昧。サーヴァントを失ったマスターが再復帰できることにも”何でもあり”な台本のご都合主義が見える。魔術による索敵能力についても説明が欲しかった。劇中で世界がゲームであることが明言されているわけでもないのに、「騎乗スキル」のようにゲーム的な単語が当たり前のように使われているのは不親切だ。
英霊に3度命令できるという令呪のルールには『デスノート』のようなゲーム性のある頭脳バトルを期待したが、ほとんどが巧く活かされることは無かった。余った令呪が終盤に使い捨てられる台本はお粗末だ。
BGM、刃や鎧の擦れるSEが良い。CGが要所に使われているが、ほとんど違和感が無く他のアニメ部分に溶け込んでいてその利点だけが際立たされていた。
切嗣(きりつぐ)の過去編1話目の物語が駆け足だし作り込みがいまいち。青年時代に急に大人の声になっていることにも違和感があった。
雁夜(かりや)はその参入理由により応援したかったのに小物でしかなく活躍しなかったことや、セイバーが不人気を呼びそうな辛気くさいキャラに成り果ててしまうことなど、物語のいくつかはあまり良くない意味で期待を裏切られたが、その予想できない意外性のある脚本には面白さを感じた。
声優のキャスティングは全体的にかなり良かった。特に良かったのは切嗣(小山力也)、アーチャー(関智一)、ライダー(大塚明夫)など。綺礼(中田譲治)の声は印象的だったけれど顔には合っていない。切嗣と綺礼は顔が似すぎているのでもう少し描き分けて欲しかった。
サーヴァントが必殺技を繰り出すときに技の名前を叫ばなければいけないところが少年漫画のようでちょっと野暮ったい。「エクス…カリヴァー!!」とか。切嗣の声で「ダブルアクセルッ…」は格好良くてしびれるけれど。